環太平洋火山帯とは
環太平洋火山帯は、1本の断層や1枚のプレートの縁ではありません。いくつかのトランスフォーム断層で結ばれた沈み込み帯の連なりで、太平洋のまわりを約4分の3周しています。プレート境界の地図では、太平洋の縁に沿ってほぼ途切れずに続く、赤橙色の収束境界の線として現れます。
この帯には、地球の地質活動の大きな割合が集中しています。地球の活火山の約75%がここに並び、世界の地震のおよそ80〜90%がここで起きているとよく言われます。正確な数字は火山や地震の数え方によって変わりますが、これに匹敵する帯は地球上にほかにありません。当サイトの地図のもとになっている火山データもそれを裏づけています。火山の数が多い上位5か国はアメリカ合衆国(165)、日本(116)、ロシア(104)、インドネシア(101)、チリ(90)で、どの国も環太平洋火山帯の長い区間を抱えています。
火山帯をつくるプレート
中心にあるのは、地球最大のプレートである太平洋プレートです。その北と西の縁では、一連の深い海溝で隣のプレートの下に沈み込んでいます。太平洋の東側では、東太平洋海膨で生まれた小さな海洋プレートが沈み込む役を担っています。ナスカプレート、ココスプレート、リベラプレート、ファンデフカプレートです。
外側の縁をつくるのは、上側にのし上がるプレートです。南北アメリカでは南アメリカプレート、北アメリカプレート、カリブプレートです。アジアと西太平洋ではオホーツクプレート、アムールプレート、フィリピン海プレート、スンダプレート、オーストラリアプレートに加え、トンガプレートやケルマデックプレートなどのマイクロプレートが集まっています。
大地震と火山が多い理由
地球で最も大きな地震を起こすのは沈み込み帯です。一方のプレートがもう一方の下に潜り込む場所では、両者がメガスラストと呼ばれる巨大でゆるやかに傾いた断層面で固着しています。ひずみは何百年もかけて蓄積し、断層の数百kmが一気にずれ動くときに解放されます。環太平洋火山帯の大部分は沈み込み帯なので、地球の巨大地震の大半と、多くの津波がここで発生します。
火山にマグマを供給しているのも、同じ沈み込むスラブです。スラブは沈みながら、その上の高温のマントルに水を放出し、その水が岩石の融点を下げます。生じたマグマが上昇し、それぞれの海溝の少し陸側に火山弧をつくります。島弧のマグマは粘り気が強くガスを多く含むため、環太平洋火山帯の火山は、1980年のセントヘレンズ山や1991年のピナトゥボ山のような爆発的な噴火を起こしやすいのです。
環太平洋火山帯をめぐる
チリとアンデス山脈
旅は南東から始まります。チリとペルーの沖では、ナスカプレートがペルー・チリ海溝で南アメリカの下に沈み込んでいます。PB2002によると、約4,300 kmの沈み込み帯に沿った平均収束速度は年約7.8 cmで、環太平洋火山帯の中でも速い部類です。その結果生まれたのが、大陸の縁に高い火山が連なるアンデス山脈です。チリだけでも、観測史上最大の1960年バルディビア地震(M9.5)と、2010年のマウレ地震(M8.8)が記録されています。ペルーでは2001年にM8.4の地震が起きました。さらに北のエクアドルとコロンビアの沿岸は、1906年にM8.8の地震に見舞われました。
中央アメリカとメキシコ
中央アメリカの沖では、ココスプレートが中米海溝で北アメリカプレートとカリブプレートの下に沈み込んでおり、PB2002では北アメリカに対して年約6.2 cmで収束しています。グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカには火山が一列に並んでいます。メキシコでは、ココスプレートとリベラプレートがメキシコ横断火山帯にマグマを供給しています。
カリフォルニアの切れ目とカスケーディア
メキシコとオレゴンのあいだでは、沈み込みが途切れています。ここでは太平洋プレートが、トランスフォーム境界であるサンアンドレアス断層に沿って北アメリカプレートとすれ違っています。沈み込みはカスケーディアで再び始まり、ファンデフカプレートがアメリカ北西部とカナダ南西部の下に年約4.0 cmで沈み込んでいます。その上にはセントヘレンズ山やレーニア山などのカスケード山脈の火山がそびえています。カスケーディアで最後に巨大地震が起きたのは1700年で、規模はマグニチュード9程度でした。
アラスカとアリューシャン列島
アラスカ南部とアリューシャン列島に沿って、太平洋プレートがアリューシャン海溝で北アメリカプレートの下に沈み込んでいます。この弧は巨大地震の記録がとりわけ多い場所です。1964年のプリンス・ウィリアム湾地震(アラスカ地震、M9.2)、1965年のラット諸島地震(M8.7)、そして1946年と1957年のM8.6の地震です。1946年のウニマク島地震では、津波がハワイを襲いました。
カムチャツカと千島列島
ベーリング海をはさんだ反対側では、太平洋プレートが千島・カムチャツカ海溝でオホーツクプレートの下に沈み込んでいます。PB2002では、両プレートの共通の境界に沿った平均収束速度は年約8.7 cmで、そのすべてが沈み込みです。カムチャツカには地球上で最も活発な火山がいくつもあり、1952年にM9.0、2025年にM8.8の地震が記録されています。
日本
日本は4枚のプレートが出会う場所にあります。PB2002では東北日本はおもにオホーツクプレート、西南日本はアムールプレートの上にありますが、多くの教科書ではこれらを北アメリカプレートとユーラシアプレートとして単純化しています。太平洋プレートは日本海溝で沈み込んでおり、2011年の東北地方太平洋沖地震(M9.1)はここで起きました。南西ではフィリピン海プレートが南海トラフで沈み込んでおり、1946年の昭和南海地震(M8.3)の震源となりました。富士山はこれらのプレートが接する場所の近くにあります。
フィリピンと台湾
日本の南では、太平洋プレートが伊豆・小笠原海溝とマリアナ海溝に沿って、フィリピン海プレートと小さなマリアナプレートの下に潜り込んでいます。マリアナ海溝には海の最深部があります。フィリピン海プレートの反対側では、台湾とフィリピンが、このプレートとアジア大陸側のプレートとの収束の場となっています。台湾では揚子江プレート、フィリピンではスンダプレートです。PB2002では、フィリピン海プレートとスンダプレートの境界に沿った平均収束速度は年約10 cmです。ミンダナオ島では1918年に、台湾では1920年に、それぞれM8.3の地震が起きました。
インドネシアとニューギニア
インドネシアでは、オーストラリアプレートがスンダ(ジャワ)海溝でスンダプレートの下に沈み込んでおり、PB2002ではその速度は年約5.8 cmです。クラカタウ山やタンボラ山はこの弧の上にあります。弧の西側にあたるスマトラ沖は太平洋ではなくインド洋に面しているため、環太平洋火山帯をインドネシア東部で終わりとする地図もあれば、スマトラまで含める地図もあります。インドネシア東部とパプアニューギニアは、バンダ海プレート、モルッカ海プレート、南ビスマルクプレートなどのマイクロプレートが入り組んだ迷路のような地域です。
トンガ、ケルマデック、ニュージーランド
火山帯はそこから南東へ向きを変え、ソロモン諸島とバヌアツを通ってトンガ海溝とケルマデック海溝へと続きます。トンガ海溝では、太平洋プレートがトンガプレートと最大で年約26 cmの速さで収束しており、これはPB2002の中で最も速い相対運動です。トンガでは2022年に、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の激しい噴火が起きました。
火山帯の終点はニュージーランドで、PB2002では太平洋プレート、オーストラリアプレート、ケルマデックプレートにまたがっています。北島の下には太平洋プレートが沈み込み、タウポ火山帯の火山にマグマを供給しています。一方、南島ではアルパイン断層がトランスフォーム断層として境界を横切っています。
環太平洋火山帯の巨大地震
当サイトのデータで1900年以降に起きたマグニチュード8.7以上の地震9回のうち、8回が環太平洋火山帯で発生しています。
- 1960年 バルディビア地震(チリ)、M9.5
- 1964年 プリンス・ウィリアム湾地震(アラスカ)、M9.2
- 2011年 東北地方太平洋沖地震(日本)、M9.1
- 1952年 カムチャツカ地震(ロシア)、M9.0
- 1906年 エクアドル・コロンビア地震、M8.8
- 2010年 マウレ地震(チリ)、M8.8
- 2025年 カムチャツカ地震(ロシア)、M8.8
- 1965年 ラット諸島地震(アラスカ)、M8.7
残る1回は、スンダ弧のインド洋側で起きた2004年のスマトラ島沖地震(M9.1)です。これらの地震はすべて地震マップで確認できます。同じ海溝に沿って並ぶ火山弧は火山マップでご覧ください。